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2024年3月9日
プロモーションとデザインの可能性について 【初めてB to C 商品開発を検討している方へ】

プロモーションとデザインの可能性について 【初めてB to C 商品開発を検討している方へ】

2023年10月に普段からお仕事でお世話になっている榊原氏が開発した商品について商品プロモーションを引受ける事にした。

そして、このプロモーションを経て5ヵ月後にクラウドファンディングで1,000万円以上の資金調達し大成功を収める事になったのだ。

私自身は今から4年前の2020年に自社ブランドを立ち上げた経緯があり、過去にもクラウドファンディングは5回経験していたので自身の経験が多少は役に立つだろうと考えていた。

榊原氏の会社は工業製品を作る(精密な金属部品)のが得意な会社で、私も普段は工業製品の加工依頼でお世話になっていた。

私達と時を同じくして2020年、榊原氏は自社工場PRの一環でB to C 商品を開発して、一般ユーザー向けに商品を開発していた。

しかし、一般消費者向けのバイヤーは工業製品のお客様とは違い、工業製品を作る上での商習慣がまったく通用しないので注意が必要だ。

案の定、榊原氏は次から次へと商品を開発し、次から次へと騙されていました。

それは商品の権利のことであったり、販売方法であったり、商取引の中で不利な条件で値決めされたりしていた。

 

私は時々榊原氏の会社にお邪魔して「こうしたらどうでしょうか?」「私ならこうやってやりますよ」とアドバイスをする日々が続いた。

当初はスポーツ用品の開発が多かったサカキギア(榊原氏のブランド名)の商品もキャンプ用品の開発が増えてきました。

(そういったお客さんが多かったのだと思います)

そんな中2023年の春に榊原氏が開発した「名もなきランタン」をクラウドファンディングするって話しが持ち上がった。

しかし、結果としてクラウドファンディングは中止に追い込まれ、自社商品としてではなく、相手先ブランド商品として先行予約販売に留まった。

榊原氏としては裏切られた気持ちだったと思います。

売れ筋商品のカスタムパーツはヒット商品への近道

当時の私は「名もなきランタン」良い商品なので、上手くプロモーションすれば売れるだろうなぁ。

と感じており、勿体ないなぁと思っていました。

キャンプ用品に限らず「売れ筋商品」(既に世の中に沢山流通している商品)のカスタムパーツは潜在的に売れる可能性があるので、私自身も新興アウトドアメーカーとしては商品開発の際には同様の商品に着目して開発する事が多かった。

商品開発する上で売り上げ数を稼ぐには、既に世の中で使っているユーザーが多くいて、更に便利になったり、ユーザー好みに使い方が出来るような商品開発はヒット商品の近道かもしれません。

 

不合理的なデザイン

今回、開発したのはLEDランタンのカスタムパーツ。

ゴールゼロ社製のLEDランタンはキャンプをされる方なら半数以上の方は持っているであろう商品。

ユーザーに受け入れられるカスタムパーツを開発できれば爆売れ間違いなしのアイテムでした。

しかし、ゴールゼロ社製のLEDランタン独特のデザインでカスタムパーツは無理だと思われていました。

大きな問題点として電源スイッチが商品上部に配置されており、カスタムする事で電源スイッチにアクセス出来なり、ゴールゼロ社製LEDランタンの一番の特徴である、容易に電源ON/OFFが出来るが失われてしまう。

更にLEDランタンは軽量である事も重宝されていて、カスタムをする事で重くなってしまう。

つまり、カスタムするメリットがなく、カスタムパーツ自体は商品数が少なかった。

カスタムパーツが少ない理由はこうだ。

LEDランタンの特徴として「軽い」「すぐに使える」「コンパクト」である。

しかし、カスタムをする事で商品の特徴が全て消滅してしまう。これがカスタムパーツが開発されてこなかった最大の原因である。

キャンプをしない榊原氏は商品の特徴を全て無視したカスタムパーツを作ったのだ。

カスタムパーツを装着する事で「重く」「すぐに使えない」「大きくなる」キャンプをする人から決して生まれるのことないカスタムパーツである。

更に榊原氏はカスタムパーツを独自の設計方法により、カスタムパーツで電源スイッチ部分に直接触れることなくON/OFFが出来るように工夫をしたのだ。(後に特許申請をすることになる)

更に更に金属材質の中でも比重の重い「真鍮」を選択したのも一般ユーザーに受け入れられた要素であろう。

今までに見たこともなく、発想も斬新、「そうか!この手があったか!」と思いました。

デザインによって新しい市場が開拓された瞬間でした。

デザインは時に合理的でない発想から生まれ、またユーザーも合理的ではないデザインを好む時もあるのか?!と感じました。

心が先

しかし、私から見ればサカキギアの商品は他社のことなので、プロモーションのお手伝いをするのか?とても迷いましたが自社の業績が比較的安定していたのと、この商品を世の中の人にもっと知ってもらおう。

何よりも町工場の特性で「モノづくり」は得意だが、「モノ売り」は不得意な性質がある、必然的にプライスリーダーにはなれずに安く自社の技術を売ってしまう傾向がある。

私は町工場にも商品開発のスキルと、開発した商品をプロモーションするスキルがあれば、プライスリーダーとなり、より利益率の高い仕事が自分たちでも生み出せると考えていました。

そんな町工場が1社でも増えれば業界にとって有意義なことです。

そして、普段からお世話になっている人でもあり、私が今まで先人たちから教えて頂いた事と比べれば、ここでお手伝いをして恩返ししても足りない位だと思い、プロモーションを引受けることにしました。

どんな良い商品も消費者に知ってもらわないと売れません

小さな資本の会社が効率良く宣伝する為には広告会社に丸投げでは効果は期待出来ないです。

ほとんど全てのことを自分達でやる必要があります。

初期段階で自社商品を広く周知するのに3つのステップが重要であるのでここにまとめます。

1 ブランディング

2 広告

3 クラウドファンディング

ブランディングについて

ブランドの世界観をユーザーと共有する必要があります。

5W1Hで世界観を伝えれるとイメージしやすいかもしれません。

幸いにもサカキギアの商品は榊原氏がInstagramを使ってコツコツと発信してきましたのでブランドイメージが定着していました。

「When:いつ」日本製の少量生産である商品

「Where:どこで」キャンプで

「Who:だれが」他人と同じ商品を持ちたくないキャンプユーザー

「What:何を」1つ1つ手作りされた特別な商品を

「Why:なぜ」他人と違うスペシャルな商品を持っている優越感

「How:どのように」サカキギアを持つことで満足する

私なりに上記の通りにブランドのイメージしていました。

日本製の少量生産品をキャンプユーザーに向けて発信するブランド。

商品は他人と被らない特別な商品ばかりで、1つ1つ手作りされた ガレージブランド特有の商品ばかり、それがサカキギアだ! そして、この世界観をユーザーの心に届くように発信する為の素材作りをしていく事になる。

 

広告について

大前提として「LEDランタンのカスタムパーツ」というカテゴリーの商品は明確に確立されていない。

そんな状況の中で商品をヒットさせるためには、プロジェクトを通して、以下の状況を作り出す必要があると考えていました。

● 市場に流通している「LEDランタン」をカスタムしたくなっちゃうように、サカキギアの商品を選んでもらう。

● 既に「LEDランタンのカスタムパーツ」をもっているのに、改めてサカキギアの商品を買ってもらう。

はっきりと確立されてない市場のなかで、どうすれば商品をヒットさせられるか?この辺りが広告についてフォーカスさせる部分であろうと定義しました。

 

その1 競合商品との違いを明確に

● ① 今までにないデザインであり、本製品を使うことで商品の印象をレトロな雰囲気に変更する事が出来る。

● ② 精密切削加工されたカスタムパーツは他にはない。(真鍮材)

● ③ カスタムパーツを取り付けた状態でスイッチのON/OFFが出来る。 ※他のカスタム商品はスイッチのON/OFFが出来ない。

まとめると「LEDランタンをレトロな雰囲気にカスタム出来る、真鍮材を精密加工した、スイッチのON/OFFが出来る商品」と言えます。

この特徴がユーザーにとって、何が嬉しいのか?

● 「真鍮材を少量生産しか出来ない日本の町工場が作る、唯一無二のLEDカスタムパーツ!スイッチのギミックあり!」と定義しました。

その2 ターゲットを明確に

どんな人が、どんな理由で購入してくれそうか?

【LEDライトの問題点】= LEDライトはその特性から無機質なデザインが一般的である。

特に最も売れているであろうゴールゼロ社製のLEDライトは性能は抜群に良いが無機質である。

【カスタムパーツの問題点】= 雰囲気を良くするためのカスタムパーツもゴールゼロ社製のスイッチの場所から、LEDライト全体を覆い被せるようなデザインは皆無で、どこか似たようなカスタムパーツが多い。

キャッチコピーはこの問題点を解決する内容にすべきである。

ここまでをまとめると

① 「真鍮材を少量生産が得意な町工場が作る、唯一無二のLDEカスタムパーツ!スイッチにギミックあり!」

② 「日本製で希少性があり、ゴールゼロLEDランタンを趣きのあるランタンにカスタムできる(真鍮製)」

③ キャンプユーザー向けに、今までゴールゼロ社製LEDランタン(類似品も含む)のカスタムを諦めていた人にとって。

④ 日本の職人が作り出す、真鍮製ランタン、ゴールゼロが趣きのあるランタンに変身。というメリットをもたらす。

これをキャッチコピーとして採用し、キャッチコピーを念頭にクラファン用のプロジェクトページを考える。

プロジェクト全体の進め方

どのように効率良く周知するかはプロモーションを指揮する私の責任でもあり、最もプレッシャーに感じていた部分でもある。

まず、普段からお世話になっている広告代理店C社に相談をした。

C社は主にネット記事や雑誌出版社にも顔が利くので頼りになる会社である。

次にSNSを活用はInstagramとXを利用することにした。

そして、当社DCTのユーザーにも広く周知する事で商品を広く知ってもらうことにした。

広告を外部に依頼するのに私達が準備するのは次の通り。

1 写真(物撮り 実際に使っているシーン)

2 商品の大きさを表す画像(大きさ・重さが一目で分かると良い)

3 商品紹介の動画 (←クリックして動画視聴できます)

4 商品名・キャッチフレーズ

おおよそ、この準備を完全に終えるのに2か月あると良いでしょう。

(当然だが商品は出来上がっている必要がある) 写真はプロカメラマンに必ず依頼して欲しい。

プロモーション用の動画もあった方が絶対に良いのでプロに依頼しよう。

外部に依頼が出来ずに自分たちで考える必要があるのは「キャッチフレーズ」だ!

実はこの時点で商品名が決まってなかったので連日深夜まで商品名を考えた。

 

クラウドファンディングについて

中小零細企業にとって日本全国に広く周知するマーケティングをするには、とても相性のよい販売方法だと思います。

クラウドファンディングの会社の多くは敷居を下げて「誰でも出来るよ」と言われますが、実際に素人がやるにはハードルが高いので、ご自身で初めてやるなら準備期間中の3か月間は「休みなし」「睡眠時間は平均以下」「本業も手につかない」ことをご理解下さい。

さて、クラウドファンディングを実行するにあたり、細々と準備する事がありますので、下記にまとめました。

 

クラウドファンディング実行にあたり必要なこと

● 商品名 キャッチフレーズを考える。 ※これが決まらないと事前の宣伝活動が何も出来ないので最初に考える!

● ブランド名 及び 商品名 の商標登録

● 特許申請(今回は特許まで取りました)

● 意匠・実用新案の登録(登録完了するまでは公開しないこと)

● 写真撮影(物撮り 使用イメージの写真)

● 動画撮影(必ずプロに依頼)

● 広告代理店との連携

● ライターさんへ文書の依頼

● 一般ユーザーに商品を提供して使ってもらう。(フィードバックをもらう為)

● イラストレーターを使える人の確保

※ 各種 権利申請についても2-3か月時間が掛かると想定して下さい。

この申請が完了しないと商品の宣伝が出来ないので早めに対応して下さい。

 

以上のことが私がプロモーションを引受けてから、商品を実際に世の中に送り出すまでのプロセスです。

クラファン全体のPVを参考として掲載します。

よくある質問

Q クラウドファンディング実行までの費用は?

A 全部を外注した場合100~200万円位だと思います。(金額については、どこに依頼するかにもよります)

何処にも知り合いがいないなどはクラウドワークスココナラ等のサービスを利用すると便利だと思います。

 

Q 自社商品は開発したいけど、何を開発していいのか分からない。

A なーんでも良いので作ってみましょう。1-2個作って諦めていたら開発なんて出来ませんよ。

デザインコンペに参加してはどうでしょうか?

マクアケ主催のデザインコンペがお勧めです。

 

Q 商品開発が全然進まない。

A 初めて商品開発をする時には予算建ても困難です。取締役など同等の決裁権限を有する人がプロジェクトリーダーにする事をお勧めます。

 

Q 商品開発の相談にのってもらいたい

A 本業があるのでタイミングにもよります。連絡頂ければ話しは聞きます。

 

最後に

零細企業では自社で商品を生み出すには大変な苦労があると思います。

私自身も商品開発は毎回苦労しています、とこんな話しをすると「〇〇さんだから出来たんだよ」とか「うちには無理だ」など、いろいろと出来ない理由をお話し聞くことが多いです。

私は今まで数多くのヒット商品を生み出した開発者さんと話しをしてきました。

その中で全員に共通する事が1つだけあります。

それば、無数の数えきれない程の商品を世の中に送り出している。という事です。

1つ開発した商品はたまたまヒット商品として爆売れしている訳ではないのです。

数えきれない程の失敗の上に、数えきれない挫折の上に、ヒット商品が生み出されている事実を知って欲しいです。

あなたの会社からもヒット商品が生まれるかもしれません。

それは1回で成功するものではなく、100回・200回・300回の挑戦の先に1回の成功がある信じて商品開発に挑んで下さい。

 

最後までお読みいただき有難うございました。

日本の中小零細企業の商品開発とデザインの可能性に期待しています。